大山を無事下山し、登山口にもなっている大山寺の裏手に出てきた。頂上付近のガスと突風はまるで夢だったかのようにキラキラと光る太陽があたりの木々を照らし始め、心地よい開放的な風があたり一面に吹き抜けた。なんて心地よいところだろう。

大山寺

山中の階段を思えば、この段差のない階段なんてなんのその(ちょっとしんどいけど)。ときおり膝がもつれそうになりながらテケテケと階段を下る。

岩に直接彫りの仏さまは大山界隈では珍しいらしい

すると、延命長寿と書かれている御神水のそばにご高齢の女性が腰掛けて座っているのが見えた。遠く神社、寺の先を遠い目で眺めていた。

女性に出会った御神水(ありがたくプラティパスに水補充)

もしかすると動けなくなったのかもしれないと思い、女性に声をかけた。女性は穏やかな笑顔を浮かべてゆっくりと話しはじめた。

「もう今は90ほどの歳なのだけれどね。昔、昔、この場所に来たことがあるの。長年、どうしてもこの場所が忘れられなくてね。ずっと戻ってきたいと思っていたの。でも、足腰も悪くなってしまって、なかなか来れなくてね。今回、家族が連れてきてくれたのよ。昔は上まで登ったのだけれど、今の私にはこの階段は無理だからここで家族を待っているのよ。それでも、本当に満足だわ、戻ってこれたの、夢のよう。」

遠い記憶を辿るような目と満足げな表情だった。

「ごめんなさいね、こんな一方的に話して。耳が悪くてね。」

「ここは、もう一度来たくなる場所ですね。再訪できてよかったですね。」

女性は聞こえていないようだったが、私に優しく微笑み返し、上から家族が戻ってきている姿を見つけて大きな笑みを浮かべた。

歩くだけでも心地の良い参道。奥に女性とご家族の姿

皆さんは、”戻りたい場所”と聞いて思い浮かぶ場所があるでしょうか?それは、土地そのものであったり、大切な人がいる光景であったり、過去のある時代であったりするかもしれません。歳を重ねて不自由な制約が増えたとき、これまでの経験を振り返ることが日々の糧となり、だからこそ若いときにいろいろ経験するのがよいのだと何かの本で読んだことがあります。

確かに、ここ大山はまた戻ってきたいと感じる心地のよい場所です。おそらく私も再訪すると思います(ユートピアコース!大神山神社も参拝したい)

戻りたい場所を探しにまだまだ旅を続けます。

奥大山で撮影されたCM。ヒカルさん撮影だけじゃなくて実際に登山してたみたいよと田中さんが教えてくれた