伝承館
早池峰神社の帰り道、参道の脇にひっそりとした脇道を見つけた。
帰り道に立ち寄りたい箇所がたくさんあり、立ち寄ろうかどうか一瞬迷ったが、好奇心には勝てなかった。

高千穂の夜神楽に出会って以降、神楽の存在が気になって仕方がない。昨年は、パンデミックの影響で残念ながら夜神楽を見ることはできなかったが(高千穂神社での観光神楽は開催されていた)、人伝いに聞く各集落の夜神楽はなんとも興味深いものだった。”夜に舞う神楽”ではなく、”夜通し舞う神楽”なのだから。
はたして、ここ早池峰の神楽とはどんなものだろうか。
え、全然違うやん!!

え、山伏が舞うの!?

岳集落の山中にある夕刻前の伝承館、ひとり貸切状態で気になるキーワードが並べられてアドレナリンマックスに(笑)なんなら閉館までいようっと。


魅惑の神楽面コレクション。やばい、これはずっと見ていられる。

どれも表情が豊かで世界に引き込まれる。もし祭りの屋台で売っていたら、今ならキャラものよりこちらを選ぶ。



高千穂でよく見かけたお面とまた雰囲気がずいぶん違う。高千穂のお家の玄関には、アメノウズメさんと猿田彦さん夫妻のツーショット面が飾られているお家もある。そうそう、少し脱線するが、”高千穂のウチの玄関”と言えば、正月のしめ縄が1年中玄関に飾られていることが多くて驚いた。地元では、とんど焼き等の行事等ですぐ燃やしてしまう。長期的に飾られるからか、しめ縄の作り、デザインにも重厚感を感じた。(さすが天孫降臨の地)

経年で味が増しているお面たち。

イタリアのベネチアでもお気に入りの面を買って現在も自室に飾っているが、このなんとも言えない面の表情に魅力を感じてしまう。(賛同してくれる友は少ない)

過度に観光化されている土地だと、こういうのもきっとグッズになったり目録を売っていたりするんだろう。しかし、ここにそんなものはなく、それが逆に好感だった。神楽解説のDVDの音だけが施設内にこだましていた。私が来た際、スタッフの年配女性がオンにしてくれたらしかった。

館内では、早池峰神社の変遷から、山伏、神楽の変遷がパネルで詳しく掲示されていた。
入り口付近には神楽殿スペースもあり、その隣では実際に神楽が舞われたときの映像が流れていた。”神楽鑑賞マニュアル”なるものも置かれており、全国各地の神楽について詳しくまとめられたいるようだった(日本神楽の違いから鑑賞の仕方など情報量がすごい!興味のある方要チェック!)。腰掛けてしばらく神楽を眺めていた。座っていると少し足に疲労感を感じ、山行後だったことを思い出した。

早池峰神楽は、どうやら面をつける場面(ネリ)と付けない場面(クズシ)があるらしい。聞いたことのない旋律だった。鑑賞マニュアルによれば、高千穂の神楽は採物神楽、早池峰の神楽は獅子神楽(山伏神楽)に分類され、祀る対象も違うようだ。興味深い。
帰り際、スタッフの女性に挨拶しようと事務所を見ると、むかごのような植物が机に広げられていた。
ここらにたくさん生えているのよ。天ぷらにすると美味しいのよ。
館を出ると、日も傾きはじめていた。女性の言っていたあの野草はどこだろうと考えながら、参道脇をぷらぷらと観察したが、見つけられなかった。
山伏の舞う早池峰神楽。また興味のわくトピックを得て、立ち寄ってよかったと神社をあとにした。
