Strike Up The Band

SNSを見ていると、年末年始は皆ここぞとばかりにシリーズもの制覇を掲げていた。

私なら何を見るかな、なんて考えていたが、もうこのシリーズしか出てこなかった。

こちら、ジュディーとミッキーのお馴染み箱庭ハイスクールミュージカル。プレイボーイのミッキーと、好きな子に振り向かれない系ガールのジュディーがお決まりの役どころ。同時期にシリーズもので制作されていて、つっこみどころ満載のストーリーはさておき、ミュージカルナンバーが秀逸ぞろい。

そのシリーズもののひとつが、この1940年公開の「Strike Up The Band(ストライク・アップ・ザ・バンド)」だ。ガーシュウィン、ロジャー・イーデンスが作詞作曲に携わり、バスビー・バークレーが監督、そのほかのメンツを挙げればキリがないくらいレジェンド級が制作に携わっている。”星より多いスター”を掲げたMGMの製作陣はまさにユニヴァースかもしれない。

この映画が収録されているホログラム加工のコレクターズボックスは宝物のひとつだが、ミュージック部分だけを切り出してコレクションされたものもブックレット付きで入っており、ファンの心をがっちりつかんでくる。もう相当な回数見ているが見飽きない。ちなみに、このときのジュディーはちょうど18歳。

今回改めて見て思ったのが、やはりバスビー・バークレー監督のカメラワークの美しさ。いかにも彼らしい撮り方は、現代では表現できないとされているものも多い。このストイックな撮影スタイルとジュディーの疲弊は、言わずもがな、数多くの裏ストーリーで語られるが、合成でもなんでもなく、動き、表情がそのままシンプルに切り取られている美しい映像にはため息が出る。

スター街道まっしぐら1940年代のジュディーは、私の一番好きな年代。少女から大人の女性へ。ドラマチックで不安定なプライベートは彼女の悲劇の代名詞のようになってしまっているが、それを作品中ではいっさい見せない。彼女は早く大人の女性を演じたかったそうだが、この作品ではまだまだけなげな少女役。1年ごとにどんどん大人の女性へと雰囲気が変わっていく彼女の姿にも注目したい。

彼女の伝記映画は、悲劇的な60年代にフォーカスされることが多いが、彼女の姿はやっぱりこの40年代作品を見てみてほしい。その裏で、どれだけ過酷な現実があったかを思うとファンとして複雑な気持ちになるが、作品でのパフォーマンスは最上級なのだから。