3.11

三陸沿いにて

幼い頃、松の木林の間をぬって浜に出たんだよ

新しく植樹された松の木の横を走りながら、砕石さんが呟きました。

景色はすっかり変わってしまったよ

2011年3月11日、東日本大震災。いまだに、TVで流れてきた衝撃的な映像が脳裏に焼きついています。日本の土地で起こった大災害ですが、訪れたことのない土地で起こった出来事は現実味がなく、どこか遠い場所の出来事のように感じることしかできませんでした。それ以降も、大きな地震は日本各地で頻繁に起こっており、高千穂在住時の地震も本当に怖い経験でした。自然災害は、どこでも、誰にでも突如としてふりかかり、災害規模の大小にかかわらず、人やその土地の運命を巻き込んで一瞬にして変えてしまいます。

福島から来たのよ。よく震災のこと聞かれるけど、もうね、気にしてても生きていけないから。若い人は出ていってしまった人が多いのが寂しいけれど。

以前、東京で出会ったご婦人たちが、遠い目で語っていた姿が印象に残っています。その頃、東北地方に知人はおらず、震災後、初めて聞いた被災者の生の声でした。現在も、たくさんの被災者の方がそれぞれに想いを抱えながら生活されていると思います。そして、岩手に住んでいると、誰しも口を揃えてこういいます。

三陸はほんといいとこだよ

週末や連休に家族でよく遊びにいくのだという話も聞きました。滝沢でも、三陸沖出身の方にお会いする機会が幾度となくありましたが、皆の口ぶりからは地元への愛着を感じました。

地球で生きる人間にとって、確かに”慣れ”は必要不可欠な機構ですが、この場所で起きた出来事は記憶の隅にとどめておいていつでも取り出せるようにしておきたいです。海外に渡航すると、3.11の話題を振られることもあるのですが、被災地を訪れ、実際の光景を自身の目で見れたことは貴重な経験でした。

奇跡の一本松

これまで、被災地でボランティア活動もされてきた砕石さん。

本当に多くの人たちの尽力によって、今の姿になったんだよ。行政は、復興はまだまだだとは言うけれど、確実に復興は進んでいる。想像を絶する瓦礫の山だったんだから。

そこは、イヤフォンで耳を塞いだかのような静寂の場所でした。砕石さんの言う瓦礫なんてはじめからなかったかのように、ただただだだっ広い土地に、見事な新緑の山並みが見えました。しかし、その色は確かに、東北の山の色でした。

そして、海に向かって松の木林を駆けていく子どもたちの光景が脳裏に浮かびました。