山に入るということ

八幡平の山

町では、”熊が出た”と騒ぐけれど、このあたりは共に生きていている存在なのだから、基本はいつも近くにいると思って行動するように。

お世話になる仙人

年季が入った仙人の車に乗り込む直前、仙人からそう告げられた。八幡平はすでに冬気温になろうとしている。この日は暖かかったが、さらに気が引き締まった。

仙人の杖

超初心者コースへ案内してくれるそうだが、それでも、道なきヤブ道、崖、岩、熊。整備された山道、登山道などとは異なり危険度も高い。登山装備だけでは不十分のようだった。姐さまも一度も行ったことはないという。非常事態が起きた際、複数人は守りきれないとの判断で、今回も姐さま&Jrの同行許可は下りなかった。あくまで、自分の身は自分で守ることが前提。

がっちりホールドのTX5を履いてきたが、長靴のほうがいいと言われ、姐さまのお母様が昔履いていた長靴に履き替えた。”何年も履いていないから、中になんかいない?大丈夫?”と心配そうに見つめる姐さま。幸い何もいなかった。ゴアジャケットを羽織り、愛用の1Lボトルを抱えて車に乗り込んだ。

先見の明

自然の中で生きる術や、これからの時代を生き抜くスキルを男女関係なく身に付けるべきだと、小さい頃から教えられてきたという姐さま。これは、サステナブルという言葉が一人歩きしはじめた昨今よりもまだもっと前の話。

しかし、仙人はこれまで、女性を荒くれ山のなかに案内するのはあまり乗り気でなかったらしい。もちろん、姐さまがそのことに興味がなかったこともある。”統計的に”女性はそういった危険が伴うことに興味を持つ人が少ないと思っていたらしい。道のない薮をかき分けて進む仙人の山行は、顔を怪我することもあり、体力面を含め気になる点も多い。だが、そんな仙人もここ最近、考えが変わってきたという。

八幡平の町なか

最近になり、私を含め、若い女性からも、山で生き抜く術を教えてほしいであったり、荒くれ山を案内してほしい、そういう山と密接した生活に興味を抱いている人に出会うことが増えたらしかった。しかも、山行後はさらに山に興味を持ってくれる人が多いのだという。

愛車ジムニー

道なき道

姐さまから、今回行く山は”道なき道”とは聞いていたが、山に入るまで、”登山道の波線ルート;獣道”を想像していた。冒頭の動画にあるような道を走りはじめ、何やらもっとワイルドな山であるらしいことを悟った。

中途半端な絶叫系アトラクションよりもアドレナリンが出る。不安よりも、ワクワク感のほうが大きかった。

ちょ、道ないですやんww

仙人、仙人の弟子親子、姐さまの旦那さん、私の5人で山に入る。この旦那さま、タコパをしたときに一度お会いしているが、なんと山行時の熊遭遇率100%だそうで。釜石のラガーマンは、快活にそう言って重い荷物を全て引き受けてくれた。