インドネシアの伝統医療

ジャムウとは

「ジャムウ」とは何か、ご存じでしょうか?

ジャムウは、古代インドネシア発祥の伝統医療薬のことで、その処方の多くは文書化されず口承により伝わっているものです。職業柄、「漢方」や「アーユルヴェーダ」は知っていますが、「ジャムウ」は初耳でした。

しかし、ジャムウは、ヒンドゥー教の思想である古代インドのアーユルヴェーダから派生した治療薬が起源とされているようです。そのため、ジャムウの前身となるウサダには、病の原因や治療法をヒンドゥー教の3大神(ヴィシュヌ、ブラフマー、シヴァ)に分けて考える思想があるそうです。アーユルヴェーダとジャムウとには密接な繋がりがあるんですね。

また、ジャムウは、ジャワ語、インドネシア語で①客をもてなす ②植物の根や葉などから作られた薬 という意味があり、その語源については諸説あるようですが、古代ジャワ語で薬を意味するジャムピやウサダがその語源と言われています。

ジャムウの原料として、何百種類もの薬草や非植物性の材料が使われますが、医師が処方して治療する漢方とは違い、ジャムウは家庭で健康づくりを目指す”未病”に対するレシピなのです。

しかし、インドネシアのイスラム社会への変遷、ヨーロッパ諸国による植民地化、日本による占領など、怒涛の歴史に翻弄され、ジャムウは歴史の表舞台から姿を消したと言われています。

西洋医学では、エビデンスに基づいて即効性のある治療薬が求められることが多いですが、ジャムウは経験則に基づく伝統レシピです。世の中には、出所の不確かなサプリや健康食品の類もたくさんあります。そんなとき、このエビデンスというのは一種の指標になりますが、プラセボ効果や種々のバイアスも存在し、人体ではin vitroと同等の動態を示すとは限りません。歴史の波に淘汰され、1000年以上も前の古代から現代に伝わってきたという事実。伝統医学には、歴史そのものや効果の期待以上の、経験則の優越性と可能性が秘められているようで興味がわいてきます。

アル・バラカ

ジャムウを扱う店がカトンにあると知り訪ねました。

店内には薬剤師がいる薬局のようなイメージを持っていたのですが、店内に薬剤師はおらず、健康食品を扱う雑貨店のような感じでした。それでも、フロアの半分はジャムウを含む医薬品や健康食品、化粧品などのドラッグコーナー、もう半分は食品コーナーでした(表の看板にあるとおり、ドライフルーツは大変魅力的でした)。

マッキーの体調がすぐれないので、ここで薬を選びました(レジ前に大手製薬メーカーの西洋薬も売っています)。また、自分用にジャムウ処方のヘアケア製品などをいくつか買って帰りました。いつも見るアーユルヴェーダ製品とは、デザインや香りなど、もちろん使われている薬草の種類も違います。

ジャムウについて話が聞きたかったので、店員さんに尋ねましたが、自分たちは薬剤師ではないので詳しくは分からないとのことでした。少し残念に思いながら店員さんたちとしばらく話をし、お店を出ました。

「それにしても、こんなに買ったっけ?」

袋を開けてみると、見覚えのない商品が。慌ててお店に戻ると、店員さんたちが、「話せて楽しかったよ!お土産にどうぞ〜」と笑顔を返してくれました。礼を言い、お店を後にしました。

2人でありがたくいただきました

今度来るときまでに、少しジャムウを調べてこようっと。