初めての一張羅
サリーをタンジャブールにて
サリーを買う予定も、着る予定もなかった。荷物のこともあったし、なんだかまだ”そこ”に到達していないような気がしていた。南インドの女性は日常的にサリー着ているし、そんな特別なことではないのかもしれないが、そういう気分だった。この先、もうここに来ないかもしれないし、そうなると、手に入れることも難しいのかもしれない。けれど、今はお稽古サリーを着れるだけで満足している。

そんな折、奉納前日に師から皆へメッセージが届く。先生からのメッセージはいつも温かくて気持ちが温かくなるのだが、今回はさらに強い想いがこめられていて私たちも胸が熱くなった。
ぜひサリーを着て奉納舞を見にきてください。きっと特別なものになるでしょうから、と綴られていた。
先生の言葉に気持ちが昂り、思わずつぶやいた。
サリーを買いに行こう!
皆も考えは同じだった。特別な時間を、特別な格好で。サリーを着ない理由など並べたところで、もう響かなかった。想いを重ねることのできる仲間に恵まれて幸せだ。翌日、早速サリー探しに出かけた。
個人で営む小さなブティックから、品揃えが豊富な大型店までサリーショップは数えきれないほどあるが、私たちはまず小さなブティックへと向かった。観光本などには載っていないであろう通りに静かにひっそりと佇んでいた。リキシャドライバーのおじちゃんが声をかけ、ようやくドアが開かれた。ドアの奥には、カラフルな商品が綺麗に整頓され、とても心地のよい空間が広がっていた。

スタッフの皆さんが、予算とオケージョンに合う商品を親身になって出してきてくれた。サリーの出会いは一期一会のインスピレーション。デザインや色で迷いそうだなと思っていたが、とっておきの一着をすんなりと選んだ。
シルクの質感はとても美しかったが、コットンのナチュラルな美しさと予算の兼ね合いで、今回はコットンサリーにした。デザインは、ここタンジャブールオリジナルのデザインだそうだ。のちに、チェンナイでサリーをチェックしてみたのだが、ここで見せていただいたような価格帯では一着も見つけることができなかった。

お店を出るとき、一人ずつジャスミンの花を髪に付けてくれた。

そのあと、他のお店を巡り歩き、ペチコートにブラウス、安全ピン、アクセサリー一式、ビンディーも揃え、一張羅を着る準備が整った。この日のショッピングがとても楽しくて、ここでショッピング熱に火が灯る。
かずえさんにサリーを着せてもらい、鏡に映った自分は別人だった。
夕方、オートリキシャに乗り込み、寺院へと向かう。とても晴れやかな気持ちで、寺のゴープラムを通り抜ける。慣れないサリーに辿々しい歩き方だったが、初めての一張羅に誇らしいような、恥ずかしいような、”小学1年生の入学式ってこんな感じだったかな”なんて思い出していた。

途中、あなたのサリースタイル素敵ね!と地元ギャルたちが言いに来てくれた。嬉しい。
皆、それぞれに美しいサリー姿だった。お稽古サリーのときとはまた違う景色だった。サリーで歩く寺院、奉納の舞台。とても特別な時間だった、師の言葉のとおりに。
