アルナーチャラ山

紅(アルナ)の不動(アチャラ)なる山

ティルヴァンナーマライの象徴であるアルナーチャラ山は、シヴァ神が宿る814mの神聖な火山である。巡礼者たちは山を一周する「ギリ・プラダクシナ」を行い、麓には聖者ラマナ・マハルシの修行地であるアシュラムがある。ラマナ・マハルシの肖像は、街のいたるところで目にした。レストランのキャッシャーの上、オートリキシャの車内など、インドの人々に崇められ、親しまれている。

寺院からアシュラム方面に向かう道路沿い。街のいたるところで信仰の光景を目にする
毎朝のコーラム

ここは、山全体がシヴァ神の化身(アグニ・リンガム)とみなされる聖地で、街のさまざまな角度から山を眺めることができる。日々、山のある環境を求めがちな私にとって、とても心地のよい場所に感じた。

アルナーチャラ山のお膝元
山の麓には地元の人たちの日常がある

山を一周して巡礼するのは、お遍路のような感じなのだろう。ここでは、満月の夜に歩くのも人気があるらしい。ダヤ先生一行も山を一周して巡礼したそうだ。巡礼ルートも魅力的だったが、今回、私たちはアシュラムから山頂までのハイキングをすることにした。

アシュラムから山頂へ

アシュラムの敷地に入り、まず靴を脱ぐ。左側の靴ロッカーに預けるか、袋にしまう。どこのお寺でも靴を脱ぐように、神聖な場所では靴を脱いで入るというのが礼儀作法になっている。各地方を巡っていて、外国人観光客の姿はあまり見かけなかったが、ここでは外国人の割合が多かった。瞑想をしに世界中のヨギーたちもたくさん訪れる場所なのだろう。

アシュラムでは、大きな声で話すことが禁止されている。静寂の通路、祈りと瞑想の空間を通り抜けた先にハイキングルートがある。開放感のある山の道に入り、裸足で一歩ずつ石を踏み締めて登っていく。それぞれのペースで、静かに、けれど力強く。裸足でこれだけの道のりを歩くのは初めての経験だ。ルートは綺麗に整備され、通路の石もスムースに、やや丸みを帯びて歩きやすくなっていた。いったいどれほどの巡礼者たちが、この石の上を通っていったのだろう。

いつもの山歩きよりも、石の選定と足運びに集中することが求められる。裸足で歩き回ることに慣れていない足は、あまりに無防備だった。

裸足で山を歩くというのは、とても心地がよい。大地のエネルギーを肌で直接感じるようだ。怪我をしないよう集中力は必要だったが、インドでハイキングできることに意気揚々として、いつしかトレラン風情に。そういえば昨夏、バッザはいつも裸足でハイキングをしていた。

道すがら、山の石を使った作品を売る職人たちがちらほら露店を出していた。初めに出会った少年は、今売っているのは祖父の作品で、自分は職人見習いの修行をしているのだという。彼の祖父の作品は全て手作業で仕上げたものだと言っていたが、それはとても緻密で見事だった。石は重いので買うつもりはなかったが、販売知識も豊富で、祖父を尊敬する姿勢や言葉の選び方に好感の持てる少年だったので、ひとつ作品を購入することにした。シヴァの山を象徴するモチーフが丁寧に刻まれている素敵な作品だった。その後も、他の職人たちの作品を見てみたが、あの少年の売っていたものが一番緻密で丁寧、好みだった。買ってよかったと思う。

山の上から眺めるアルナーチャレーシュワラ寺院にはシヴァの火が灯る。祈りの音がここまで聞こえてくる

頂上にも瞑想の場所があり、私は外の切り株に腰かけた。静かで清々しい風が吹いていた。

下山は、もと来た道を戻るか、別の出口に抜けるエスケープルート。私たちはエスケープルートを下って、評判のベジレストランを目指した。

南インドでハイキングができて嬉しい。裸足でシヴァのお山のハイキング。