人口の8割がフランス系のケベック州。学生時代にフランス語が公用語と習ったあのケベック州だ。歴史的な建物と最新の施設が融合したここモントリオールは、カナダ第2の都市。町を歩いているとフランス語が四方から聞こえてくるし、フランス語が英語と並記されている。トロントで感じたあのアメリカンな雰囲気は全くなく、これはフレンチの響きからくるものなのか、落ち着いた穏やかな空気が流れている。

穏やかな日差しが似合う町

エルとの再会

モントリオールを訪れたのは、中国の友人エル(仮名)を訪ねるためである。彼女とはドイツのケルンで出会った。母国語以外に、英語、フランス語、ドイツ語が堪能で、世界をまたに駆けて仕事をする彼女の姿はとても刺激的だ。「最近ここモントリオールで運転免許をとったの」と乗せてくれた車には、自筆のフランス語で書かれた付箋がいたるところに貼ってあった。こうすると、覚えやすいでしょう?と彼女は笑っていた。

ケベックの代表料理、ポテト!写真の何倍もヘビーwww

モントリオールの料理が食べたいとリクエストすると、しばらく考えた彼女は、地元の人が集まるにぎやかなこの店に案内してくれた。こじんまりとした店内は満席で、皆ビールを飲みながら楽しそうな笑い声が響いていた。小躍りして盛り上がるグループや、立ち飲みしながら席が空くのを待つ客もいた。彼女は、フランス語で店員さんにテキパキと注文してくれた。

「カナディアンムードだね!」と言うと、「ノンノン、ケベックムード」と彼女は言った。

旧港のコンテナ

単身で世界を往復する彼女は、この先はまた違う国で生活するつもりだと言っていた。

いろんな国で、出身国が理由で拒否されることもあるよ。海外にいるから外から見た自国の雰囲気も分かってるし、ああいう雰囲気が少し苦手で出たのもあるのだけれど。それでもやっぱり辛いときもあるよね。

彼女の堂々としながらも、その謙虚な姿を見ると、本当にそのとおりなのだろうなと感じる。旅人では分からない我慢や苦労もあるだろう。これまでに海外に行かれたことのある方ならうなずく人も多いと思うが、国名を聞いて相手の態度がガラリと変わったということはあるあるだ。丁寧な態度で接してきた日本の先人たちに感謝することも多い。また一方で、メディアで報道されるステレオタイプな中国人のイメージというのも、政治色と相まってかなり強烈だ。そして、これを”アジア系”とひとまとめにして考える人がいるのも確かだ。

ただ、同じ日本人でも一人一人全く違うように、どの国の人もそれぞれ全く違う。これは頭では分かっていても、いざ現実に直面すると先入観が邪魔をして難しいこともある。

脱カテゴライズ

中国人と言えば、以前、ミュンヘンのユースで同室になった中国人の女性がいた(エルとは別人)。彼女は最初、メディアでの政治的報道から、日本人に対し少し警戒心を持っていたようだ。しかし、毎晩同室メンバーで談笑するなかですっかり打ち解けた。ある日、ノイシュバンシュタイン城の日帰り旅からクタクタで帰宅すると、ベッド脇に、手書きで丁寧に綴られた手紙とハイネケンが添えてあった。その日チェックアウトした彼女からだった。

あなたは私が初めて会った日本人です。それまでのイメージが変わりました。出会えて、話せて本当に楽しかったです。先の旅も気をつけて。またどこかで。

実際はもっと長文で丁寧な手紙だったが、要旨はだいたいこんな感じだった。その言葉と心遣いが本当に嬉しくて、感動のあまりリュックを背負ったままベッド脇にしばらく立ち尽くしていたのを覚えている。


日本人、外国人関係なく、新しく人と出会うときはいつもフラットな状態で接したい。これまでの経験や知識は確かに役に立つけれど、単なる道具であって全てではない。脱カテゴライズ。それに性善説、性悪説、まあいろいろあると思うが、先入観が表に出てきそうなときは、いつも彼女たちの姿と言葉を思い出している。