新山口駅前の作品

旅先でのちょっとした出来事は、その土地の代名詞になることが多い。

以前にも言ったとおり、私にとっての山口は”透明”。大学時代、山口出身の先輩が何人かいて、皆ほがらかで笑顔が印象的、周囲を明るく照らしてくれる存在で可愛がってもらったのを覚えている。よく”ぶち〜”と言っていたな。だから、透明のやまぐちマップに笑う先輩たちの顔シールが貼ってあるような、そんな感じ。

今回の山口市滞在は車での移動が多かったが、ある夜に電車を利用する機会があった。ホームは2つ、慣れぬ土地とはいえ、まあ間違うこともないだろう。

が、そこは期待どおり(笑)まんまと反対の電車に乗車(リラックスした旅先でよくやるねんこういうの)。気づいた私は、「やらかした!!」と叫んで電車を降りた。山口ー新山口を大阪ー新大阪に脳内変換していた私。夜とはいえまだ早い。そこで見たのは薄暗く閑散としたホーム。自動改札もなければ駅員さんもいない駅舎。なんだかヤな雲行き。偶然同じタイミングで降車した青年を見つけ、次の電車を尋ねた。

「あの〜、もうこれ終電です。」と青年。

「な!?!?!?タクシー乗り場どこですか?」
「タクシーですか、、いるときもありますが、ここらへんはなかなか。。」
「え?そんな遅い時間じゃないでしょ!?え?どういうこと?」

戸惑いながら駅舎を出ると、車でお迎えにきていた青年のお母様の姿があった。「ありがとう〜」そう言って私は青年を見送った。青年は母のもとに駆けていき、すぐにまた走って戻ってきた。

「母が、まだ終電ある駅まで送ってくれるって。乗ってください!」ドッキリテレビに出たかのように驚いた表情のまま「乗って、乗って」と奥からお母様の声が聞こえてきた。

「まあまあ、遠く兵庫から。ここは終電も早いでしょう。車も一人一台の世界なんよ。この子今高校生でバイト帰りなんだけど、道も暗いし迎えに来ていたの。口下手な子だからちゃんと応対できたのかしら。」

数駅ぶん車で送っていただいたので何かお礼をと言うと、「いいのよ、いいのよ。気をつけて帰ってちょうだいね。」と言って微笑んでくれた。丁寧にお礼を告げ、まだあかりの灯った駅舎に入った。

スマホでいろいろ調べお母様に交渉してくれた親切な青年。ドッキリにも親切に対応してくれたお母様。助かりました、ほんとうにありがとうございました。

”透明”なやまぐちがどんどん色づいてくる。

今回、予定が合わず会えなかった先輩。
今度また会いにこよう、やまぐちへ。