あぐりてらす阿知須

昨年訪れた、きらら博記念公園のある阿知須地区。

あぐりてらすから見える阿知須地区

今年は、この阿知須で農業、加工品の生産、販売をされているあぐりてらす阿知須さんを訪ねました。事前に、稲作だけでなく6次産業化を実践されていると伺っていましたが、この6次産業化というのは初めて聞く言葉でした。

6次産業化とは

農林漁業者(1次産業)が、農産物などの生産物の元々持っている価値をさらに高め、それにより、農林漁業者の所得(収入)を向上していくことです。

生産物の価値を上げるため、農林漁業者が、農畜産物・水産物の生産だけでなく、食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)にも取り組み、それによって農林水産業を活性化させ、農山漁村の経済を豊かにしていこうとするものです。

農林水産省HPより
代表、長尾さんのお話を伺う、机にはここで作られている加工品たちが並ぶ

農業だけでなく、加工品を商品化するまでの試行錯誤の年月。なかでも、この地方の特産品、”寒漬”が商品化されるまでには10年かかったそうです。

その生産工程は私が想像していた以上に手間のかかるものでした。まず原材料となる大根は、冬の寒い時期に干し半年以上熟成(トータル1年程度かかる)させてからしょうゆベースの調味液に漬け込みます。昔は各家庭でつくられる伝統食だったようですが、現在、この地域で生産されているのは3軒のみ。10年前、地域で寒漬を一番多く作っていた漬物店が閉店を決め、この伝統食を残すため、こちらで商品開発が始まったそうです。

6次産業体験

あぐりてらすさんには、シンプルながらおしゃれなパッケージの商品がたくさん。

鮮やかな野菜がひときわ目をひくピクルス、奥には寒漬けにされる干された大根も。地元の方が買っていかれるそう。

そのなかでも特にイチオシ!な人気商品、ピクルスと寒漬の加工体験をさせていただきました。

山口きららピクルス(きゅうり、赤玉ねぎ)

1、切る

地元の農家さんで作られた野菜たち。新鮮な色とりどりの野菜たちが並ぶ商品は見ているとワクワクしてきます。まずは、瓶に詰める野菜たちを好きなかたちに切っていきます。

野菜を好きな形に切っていく。星形のきゅうりも!

ちょっと凝ったかたちにしたいなあ、と思いましたが、私にそんなスキルもないので素直に見本どおりに切りました。続いて大きな赤玉ねぎも。

皆切るのうまいなあ、と思いながらチラチラ、私は玉ねぎの”厚切り”が完成(手前はのすけさん)

2、詰める

野菜を切ったあとは、その野菜たちを瓶詰めしていきます。

瓶の中でいかに隙間なく美しく配置できるか、ピンセットを使って魅せながら配置していく

この瓶詰めの配置で出来上がったときの美しさが決まります。薄切りレモンを側面に配置し、星形のきゅうりを散りばめていきます。流れ星のごとくレモンピールやディルも。まるで、瓶の中が天の川、、、、(なんてことにはならず、最後になると見た目とか言ってらんない、とぎゅうぎゅう詰めに。隙間に入れ、野菜たちよ!笑)

実際に販売されている商品を眺めているとうっとりするくらい美しいのですが、これは、それぞれの野菜の食感や色合いを一番引き出す切り方や並べ方など、試行錯誤を重ねて販売されているようです。一見、簡単そうな作業に見えますが、実際に体験してそのシンプルさゆえの難しさが分かりました。

3、お酢を注ぐ

ある程度詰め終わったら、いよいよお酢(こちらも阿知須産!)を注いでいきます。お酢を注ぐと、目一杯詰まっていた瓶の中に余裕が少し生まれてきます。難解なごちゃ混ぜのパズルの内部にゆとりができ、それらしい感じになりました。赤玉ねぎのほうは、お酢を注ぐと瓶内部はアントシアニンで赤紫色に。ディルが緑のアクセントになってとても綺麗!

4、蓋を閉める

まだ終わりませんよ。蓋を軽く閉めて”閉まった”と思うのは一段階目。ここからさらにぎゅっと閉める。これ、コツがあって難しいんです。コツをつかめば二個目は楽勝。

ピクルス完成!

いつまでも眺めていられそうなお野菜の色、美しい!

寒漬け

寒漬けと寒漬け用の干し熟成大根

今回はこの手間暇をかけて熟成された、カット大根を使い加工していきます。

この乾燥大根が、漬物に?いまいち想像ができなかった

1、しっかり揉み洗い

流水で丁寧に揉み洗い

2、水気をとる

キッチンペーパー、タオルで大根の水気をきっていきます。この作業が一番きつかったです。この段階でどれだけ水気をとれるかが、漬物の旨さに直結するらしいのですが、いくら絞っても絞っても大根から水分が滲み出てきます。

もう十分だろうと、チェックしてもらいました。

あともうちょっとですね

その後の、ぬれ大根との格闘は永遠に感じました。大根に吸い付いたキッチンペーパーが大根に見えてきた頃、ようやくOKをいただきました(笑)

3、トッピングを乗せて甘醤油の調味液を注ぐ

これ、さっきの乾燥大根!?ごまや唐辛子、トッピングの量や組み合わせはお好みで

調味液を注ぎ、蓋をします。

4、プレス機で蓋を圧着し密封する

ついに完成!大根がどんどん染みていっている。

密封しているので、傾けても逆さにしてもこぼれません。これで持ち帰りも安心です。保存もきくようなので、帰ってから浸かった寒漬けを食べるのが楽しみです。どんな味、食感なんでしょうか。わくわくします。

食べるのが楽しみ
丁寧なご指導ありがとうございました!

どれだけ良いものであっても、誰かが受け継いでいかなければ消えていってしまうものの多さ。こうして地元の方に愛されるものを残してくれる場所、人がいるってありがたいですね。

後日談

帰宅後早速、作ってきたピクルスをお弁当に詰めていきました。

ピクルスで山口の思い出話が華やぐ

レモンがとてもいい仕事をしていました。ないとあるのとでは味が全然違うと思います。ただの飾りではなかったんですね。

星形きゅうりのピクルス

同僚に山口で作ってきたのだと話すと、「ものすごく鮮やかな色だね、食紅か何か着色料を使っているの?」と聞かれたので、原材料にもこだわっている会社で、野菜そのもののアントシアニンの色だと伝えると大変驚いていました。土地柄、関東より西側には行ったことがないという方が多いので、興味深そうに話を聞いてくれました。

こちらのピクルスは空港やインターネットでも購入できるようです。

寒漬け、、一人暮らしには量多そうだしどうしようと思っていたのですが、開けて早々に食べ切ってしまいました(笑)あれだけあったのに一瞬でした。写真すらありません。癖になる食感で甘辛く、ホントに美味しかったです。スパイシーなほうが好みなので唐辛子を少し多めに入れたのですが、もっと入れてもよかったかも。

食べ切ったあと調味液がたくさん残っていて、これにあの乾燥大根入れてもう一度漬けたいな〜と思っていたところ、のすけさんも同じことを考えていたようで、近日山口を再訪予定とのことで探してきてくれることに。他のものを漬けてみようかなと考えていましたが、のすけさんの報告、首を長くして待っています!また見つかったら報告します。

寒漬けは「道の駅きららあじす」で購入できます。