お天気もどうにかもちこたえ、少しムシっとする初夏の日。山口県山岳・スポーツクライミング連盟の方々にガイドしてもらい、陶ヶ岳に登ってきました。チームで山を歩いた経験は片手で数えるほどしかなく、貴重な体験ができました。

軽量化とエマージェンシー

朗らかな笑顔が印象的な田中さんに山の情報を伺う。カリマーポーチを持った山好き女同士、ギアの話にも盛り上がる

普段、一人山行が多い私のバックパックは、日帰りトレック時にはその半分を真っ赤な袋のエマージェンシーキットが埋め尽くします。不測の事態は、山の標高に関係なく、いつも突然訪れます。人里離れた滑落地帯の岩肌、熱帯地域のジャングルのようなけもの道、地図にも載っていない未開の土地、整備されたふうの階段が永遠に続く道。こういうところを一人トレックするには、あらゆる事態を想定したエマージェンシーキットが命綱になるのです。最近はULトレックが一般的ですが、それでもやはり重いし嵩張ります。機能を落とさないまま、いかにもっと軽量化するか。私の山行の課題であり、旅の課題でもあります。

山を見ながら地図で確認

一人山行ばかりしていると、やはり生の情報が不足しがちになります。自分から情報をつかみにいくしかないのですから、当然といえば当然です。チームでの登山は、その欠けた情報を補ってくれるメンバーたちの存在が励みになります。そこに寄りかかっているだけでは、元も子もないのですが。これは仕事にも当てはまりますよね。

そして、エマージェンシーは突然に。

「やばい!切れた!」

何気に持ったロープで指が切れてしまいました。エマージェンシーキット?チーム登山に気を緩めた今日のリュックには最小限しか入れていません(反省)。すると、大きなバックパックから即座に絆創膏を差し出してくれた田中さん。

「田中さんのバックパックから出てこないものはない、なんてよく言われるのよ。笑」

「そうそう、これ捨てなくてよかったわ。このグローブもよければ使ってちょうだい。」田中さんが優しく微笑みました。

側では連盟の方が集まって話し合っていました。「定期的に清掃メンテナンスでチェックしてるのにな。雨風なんかで劣化しているみたいだな、なんとかしないと。」山をメンテナンスするって大変だなあ。

そしてまた、エマージェンシーは突然に(え、また?)

ぽけ〜と石にもたれて無防備なランチタイム。顔を見事、やぶ蚊に食われました。眉の上がかゆくてたまらない。(いつもなら剤形違いのステロイドとNSAIDsを持っているのに、もう、反省)

すると、横で手作り弁当を食べていた田中さんが、魔法のバックパックから手作りのハッカ水を差し出してくれました。「あらまあ、赤くなってるわ。痒そうねえ。かまれてすぐにこれを塗るといいのよ。すごくよく効くのよ。」すーっとするメントールの香りが鼻をぬけ、数分後には自然と痒みがおさまっていました。ハッカ水の効力を完全になめていました。夏の季節に大量納品するハッカ水コーナー、今ならもっと盛大なポップを描く自信があります。

田中さん手作りのたくあん

安全快適な山登りは準備から

いつもは持っているのになとか、いつもならこんなの大丈夫なのにな。と言い訳を並べてもどうにもなりません。田中さんは、各地の山以外にも”お庭”のお山にもよく登っておられるそうですが、携行品は同じように持っていくそうです。田中さんほどのベテランの方でもその知識に奢ることなく、常に不足の事態を想定した万全の体制で挑む姿を目の当たりにし、改めて自身のエマージェンシーキットを見直そうと思いました。キットを何パターンか考えようかな。誰かと一緒に登るのも、なかなかいいもんだよなあ。

カオスなバックパックの中は常にアップデートが必要です。