見送りは盛大に
前半戦、ガスに阻まれて眺望は望めなかったが、下山時には清々しい岩手グリーンが顔を覗かせていた。8合目付近の美しさには息をのんだ。地元ハイカーの方々が目を輝かせながら話していた、岩手山の美しさの共演を、ここで初めて見たような気がした。

登りで苦戦したガレザレを慎重に下っていく。滑らないようにと常に気を張っていて、トイレに行きたくなることもなかった。それにしても腹が減った。いつもなら十分足りる行動食も、今日は早くに食べきってしまった。

ピストンでの登山は好みではないが、前半に拝めなかった岩手の景色が見れて、後半は気分良く写真を撮り続けていた。緑のパッチワークが美しい。滝沢に住んでいるとは言え、周辺は新興住宅地が広がっている。古民家さえ見ない周辺地域に、”思い描いていた自然なんて実はないんじゃないか”とさえ思っていたが、ここでは見渡す限りみどりが広がっていて、どこか安堵した。
登って、神戸みたいな景色が見えたらどうしよう、なんて思っていたのだから。杞憂に終わってよかった。


下山後の談話
慣れない土地での初登山は想像以上にしんどい山行だった。同僚に登頂を報告すると、賞賛とともに、”お疲れさん。岩手では岩手山を越える過酷な山行はないからあとは楽勝だよ(笑)”と励まされた。

2000mを越える岩手山は、地元出身だからと言って皆が登っているわけではないようだ。その後、岩手山に登ったと言うたび、地元の人の温かい眼差しが向けられることが多い。
そして、皆こう続ける。
自分の出身地から見る岩手山が一番だ