棚ぼた

仕方がない、諦めよう。

そう思って店を出たはずなのに、頭から餅が離れない。行きは坂道を漕ぐのに少々力がいったが、坂道を疾走する帰りの清々しさといったら、最高だった。

疾走しながら、また考えていた。

こういう心地のよい澄んだ場所では、誰かがきっと餅を作っている。←

マップを見ると、雫石にはジェラートなどの乳製品を扱うお店が多い。全国区の小岩井農場もこの雫石にある。”松ぼっくり”というアイスクリーム屋さんの脇を通りかかった。雫石出身の同僚や、物産館のスタッフさんにもおすすめされた場所だが、乳製品は食べないのでそのまま通り過ぎようとしていたそのとき、真横に産直スーパーがあることに気づいた。

岩手に来てから、その数の多さとクオリティーの高さに感動し、産直は一目おく存在になっていた。しかし、そのほとんどが徒歩でのアクセスが不便でネックに感じていたが、運良く巡りあったのだから、寄らずにはいられなかった。

こじんまりとした産直だったが、入り口から、ここ雫石で作られた新鮮な野菜が並べられ、店内にも珍しい野菜や季節の野菜が所狭しと並べられていた。例えば、ミニトマトなんかは6種程度の品種が置かれていて、カラフルな彩で棚を明るくしていた。そして、地元の方が作った加工食品の類も充実していた。この小さな宝石店を訪れる客は多く、陳列がまだら模様になっていることからも人気店なのだろうと容易にわかった。

餅!

入店時からの期待を裏切ることなく、餅や饅頭も並べられていた。しかし、もう在庫が少ないぞ、急げ!私が餅を手に取ると、隣にいた地元のおばちゃんも、あら、美味しそうねと手に取り、すぐに在庫はなくなった。

この雫石で買った胡麻餅、”岩手で食べた餅ランキング上位3位以内に確定”。偶然見つけたお店、産直は裏切らない。まさに棚からぼた餅。ほんとうに美味しかった。お野菜もいくつか買って帰った。