城山散策の後半戦は、ランチのことしか考えていませんでした。検索してみると、近くにビーガン対応のお店を発見して行ってみることにしました。鹿児島産の有機野菜を使った、玄米・菜食のマクロビオティック料理のお店のようです。

お店に入ると手作りの温かい雰囲気です。ご夫婦でされており、長居してしまいそうな感じ。お店は静かでゆっくりとした時間が流れています。時折、常連のお客さんがやってきて、店主と親しく話したり、豆乳の瓶を返却しにきたりしていました。

布に書かれた手作りのメニュー表からもこだわりが伝わってきました。外食時、いつもあればいいのになと望むものがたくさんメニューに載っていたからです。お料理の水は湧き水、味噌もしょうゆも原材料から有機のものを使用してされているようです。こんなにこだわりが詰まっているのに良心的な値段設定にも驚きました。

「ビーガンであれば、作楽定食がおすすめですね」

お料理は注文を受けてから、カウンター奥で奥さまがお料理をされていました。チェーン店などと比べると、配膳までに少し時間はかかったものの、一から手作りをされている安心感と期待感はなかなか他では味わえないのではないでしょうか。

作楽定食

外食となると味の濃いものが多くどうしても敬遠しがちになりますが、素材の味を生かしたオーガニック料理は、できたての家庭料理のようでした。どれも美味しかったのですが、一番感動したのは玄米ご飯です。家庭でも雑穀ご飯や玄米ご飯がメインですが、ここで食べたのは思わず笑みがこぼれるくらい美味しかったです。お水、炊き方などいろいろこだわりが詰まっているのだと思います。玄米を食べ終わる頃にはお腹がいっぱいになっていました。

玄米に感動し、定食を食べ終わった後、玄米珈琲というものを注文しました。玄米珈琲は断食明けの回復食の時期にも飲まれるもののようで、香ばしい玄米の香りは嗅いでいるだけでも落ち着く香りでした。

作楽は、この土地で30年以上されているようです。日本の食事情のあれこれについて、奥さまと長い時間話し込んでしまいました。昔から危険だと言われているような、体に入ると毒だと言われているようなものを平気で使い続ける社会構造。私の考えのベースになっている、レイチェル・カーソンのことももちろんご存知でした。口に入れ体を作るものが食事なのだから、安心できるものでないといけない。それを軽視してはいけない。奥さまは強い眼差しでそう言いました。有機野菜となると、スーパーなどの最前列で売られている野菜よりもいくらか高いことが多いですよね。毎日食べるものだからこそ値段も無視できない要素ではあるけれど、身体への長期的な影響を考えると天秤にかけて良いものなのだろうかと思ってしまいます。

ヨーロッパ諸国を旅した際、全ての国ではないけれど、知らないうちにオーガニックのものを買い込んでいた(レシートに書いてあった、認証マークをあとで見つけた等)ことが何度もありました。オーガニックのものとそうでないものの価格差がそれほど変わらなかったと記憶しています。化学薬品の蔓延は日本に限った話ではなく世界全体に及んでいますが、それに反発するかたちでオーガニックを推進する動きが活発な国もあることを知りました。ご夫婦がヨーロッパを旅された数十年前はまだそうでなかったと伺い、これがまだ新しいムーブメントなのだと感じました。

そうは言うものの、こと食事に関してはいろいろな見解があり、長年お店をやるなかでいろんな意見があったと伺いました。食事の選択は強制ではありません。ただ、自身の健康管理のその先、未来の生態系や環境にまで思いを巡らせる余裕があるとき、ふと口に入れるものの正体が気になったとき、それが安心できるものかどうか振り返ってみることは大事なことだと思います。