山口と広島の県境にある連山、朝日岳、中岳、夕日岳の鋭くとがった3つの峰をもつ三倉岳連山に登る。ハイキングルートにも容赦なく鎖場が続き、ロッククライマーに愛されるお山らしい。山岳連盟の方からも「あの山はおもしろいよ」と伺っていたのでどんな冒険が待っているのかとワクワクする。

三本槍のお山のかたちが特徴的。ブルーマウンテンズで見たスリーシスターズを思い出した

山でも旅先でもそうなのだが、私はその土地の写真や話から感じる空気感に惹かれて行き先を決めることが多い。だから、なぜその場所に行くのかとか、なぜそうしたのかと論理的に問われると困ってしまうことが往々にしてある。なんとなく行ってみたくなったから、ただそれだけなのだ。


早朝にホテルを出て、JR玖波駅で降車した。(改札口は2つあり、間違って反対側で待ちぼうけしていたのだが、運良く出勤してきた駅員さんのご好意で反対側に出してもらった。写真に載せてるほうにバス停があるので注意)

ここから三倉岳の麓の村落までは唯一コミュニティーバスが走っている。地元の人のための足として残っている路線で、観光で利用するにはいささかアクセスしにくい場所である。土日は1日3本でさらに本数も絞られる。玖波駅からの最新バス時刻表を載せておくので行かれる方は参考にしてほしい。

バスメモ
大竹市コミュニティーバス(大三郎口行き)
青色のバス
玖波駅から40分程度
¥680

ローカルな雰囲気漂うこじんまりとしたバスに乗り込み、心配になるくらいひっそりとした山の道をひた走る。みどりのトンネルのなかをくぐり抜けて、麓の村落に降り立った。運転手さんに帰りのバス停を教えてもらい、そこからは登山口を目指してひたすら歩く。

連日の豪雨で当日も雨の予報だったのだが、小雨程度でどうにか持ちこたえてくれているようだ(珍しい)。今回の山行は岩場メインのため、雨による滑落には十分注意しなければと気が引きしまる。

ここクライミングする人もいるんだよなあ
鎖場

今回、濡れた岩場以上に苦戦したのが、蜘蛛の巣とヤブ蚊。人には誰一人として遭遇しなかったが、いつものように陽気に歌を歌いながら登ろうもんなら危うくヤツらを食らってしまうし、足が痒くてバタバタしていると危うく足を挫きそうになった。あまり使いたくなかったが、持っていた虫除けで全身コーティングすることにした(3割程度の減弱に成功)

持ち物メモ
虫除けスプレー、グローブ、手ぬぐい
場所メモ
山の水は飲用ok

散策中に見つけた仙人のような木の棒を携え、蜘蛛の巣まみれの髪を振り乱し、川の水で濡らした手ぬぐいで汗とディート剤にまみれた肌を冷やす。昨日のクライミングで久々に酷使した腕の筋肉がまだ回復していない。錆びついた鎖場もにわかに信じがたく、周囲の岩と何かの生き物のような木々の幹のほうがよっぽど信頼できた。


雨の多いことを皮肉るイギリスの友人から、雨のハイキングの楽しさを教えてもらった。以前なら、この怪しい雲行きでの山歩きは決行しなかっただろう。危ないし楽しめないだろうから。

下山後、地元の方に教えてもらった雰囲気のよいジャズ喫茶に入った。「今日みたいなお天気の日によく行ったね〜でもよかったでしょ。川の水飲んだかい?」とこだわりの紅茶を持ってマスターが話しかけてきた。マスターは、「この土地に惚れ込んでしまってね。家族を近くの町に残して単身移住したんだよ。」と嬉しそうに話してくれた。

「ね?楽しかったでしょ。」いたずらに笑う友人の顔を思い出した。