夏から冬へのエスケープ

車谷登山道

夏の終わりのような暖かさで、久しぶりの山行は快適なスタートとなった。久々に澄んだ空気を吸い込み、視界に入る緑を楽しんでいた。

がれ場も多く野生感のある山行で想像以上に早くお腹が空いた。早めの山ごぱん(おやつ)は赤坂のパン屋さんで買ったやつ。お団子も持ってくるんだった。

結構でかい、あちこちにたくさん落ちてるなんやこれ、調べたけど忘れた

地面は湿っていてぬかるみも多く、ゲイター持ってきて正解。積雪も予想していたが、この暖かい気候でチェーンスパイクは出番なし。

ここまでツルッツルだと、トレランシューでも走らない。いや、走れない。大人しくロープを持って進む。

次第に天候が荒れてきた。さっきまで夏を感じていたのに、冷たい風が吹き始め、雨も降り始めた。そこから気温もぐんぐん下がり、あっという間に冬がきた。誰とも出会わない”おさびし山”山行。

視界もだんだん悪くなってきた
佐賀県に突入

すっかり暴風雨となり、あたりの草木がザワザワと鳴り響いている。昨日付けたばかりのマツエクがもうすでに弱々しくなっていた。テンションが下がってくる。にわかにサングラスで守りつつ、早足で進んでいく。

そして、その”おさびし山”山行の理由を知る。

あ、修験の道でしたか。

山岳信仰”の文字に気分が高揚してきた。

不思議な山頂

脊振山は山岳仏教の修験場だが、その歴史は英彦山より古いのだそう。山頂には、弁財天や修験の祖である役行者が祀られ、その横には自衛隊のレーダー基地。なんとも不思議な光景。

山頂はかなりの暴風雨で、立っているのもやっと。気温も下がり極寒で気力が奪われる。この気候で眺望もなし。(修行感増していい?)

気温はにわかに0℃を下回っている

寒いので避難小屋へ入り、とにかくお昼の山ごぱん、大好きベーグル!って極寒でカチコチになって食べるのが辛い。完全にベーグルの旨みが失われている。

避難小屋の山ごぱん。背景が渋い。

寒さに萎え、湿気たマツエクに萎え、ベーグルに萎え、先のルート短縮を検討。ここから椎原峠まで行きエスケープ下山することにした。今日はこれで十分満足だ。

唐人の舞

その昔、唐の人がこの地を訪れた時、眺めの素晴らしさに驚き、遠くの故郷を偲び石の上で踊ったという言い伝えに由来する。このおにぎり型の岩の上で舞うのも乙らしいが、このどしゃぶりのなか実行に移せば、それこそどこかに舞い降りそうな予感がしたので自粛。

晴れれば、福岡市街や博多湾が一望できるそう。仕方がないので、地上で小躍り。

ちなみに、この日の眺望はこれ。ガスっガス。

山のにおい

思いがけず悪天候に見舞われ、クリアな景色は望めなかったが、山歩き再開で強く感じたのは、この山のにおいの心地よさ。土、緑、雨、全てが静かに混じり合い、五感に訴えかける。

誰一人として会わない静かな山行だったこともその理由のひとつかもしれない。自然の織りなす美しい色の重なりに感動が続く。