Chata pod Rysmiから頂への決断

Chata pod Rysmi

ゴアテックス装備も虚しく全身びしょ濡れ、どうにかこうにか山小屋Chata pod Rysmiに到着した。ここはRysyアタックへの最終拠点になる場所だ。

Chata pod Rysmi

混雑する入り口に並び、ようやく中に入れたものの、満員電車おしくらまんじゅう状態。身動きができない。おそろしげな悪天候から避難するためにどうにかこうにかここにやってきたのは皆同じだった。山小屋はいくらか(いや随分)温かい。びしょ濡れでやってきた人たちで蒸気がすごい。

混雑する山小屋内部

冷え切った体のまま、どのくらい棒立ちしていたのだろう。それまで必死で気にも留めなかったが、窮屈なバックパックで肩首が重く痛いことに気づいた。満員電車でそうするように、バックパックを肩から下ろして前に抱え直した。ひとり分の余裕ができた。

小屋では、皆活発に情報交換をしていた。この状況下では、どんな情報も欠かせない。誰かが話すのが聞こえてきて、すぐさまハッとする。あ、スロバキア語。

今のは、〜だって。危険だからまだ外に出るのはやめたほうがいいらしいって。数時間かかるかもって。

何か情報を耳にするたび、すぐさまマトゥースが翻訳してくれた。状況も読めず不安感だけが募っていたが、情報を聞いて安心する。ありがとう、マトゥース。

こんな状況下でも、いつもどおり食事提供が行われ山小屋のスタッフたちは慣れた顔つきで仕事をしていた。美しい絶景に囲まれたこの場所が仕事場なのは羨ましい。けれど、高頻度で災害級の悪天候に見舞われるのは、正直きつい。それでもスタッフたちの笑顔が印象的だったのは、きっとそれ以上の魅力があるのだろう。

いくら待ったかわからないけれど、次第に外に出ていく人が増えてきた。頂上にアタックする人もいたし、諦めて下山する人もいた。どちらかと言えば、下山組のほうが多数派だった。

体も温まり、動くのが少し億劫になってきた頃、マトゥースがこう尋ねてきた。

この後どうする?君はどうしたい?というのもね、ここハイタトラスは、君にとってそう気軽に来れるところじゃないでしょ。だからこのまま頂上目指すのもいいし、もう十分だったら下山でもいいよ。

山で恐怖を感じたら引き返したほうがいい。これは山に登るなら大前提。雨のハイキングはそれなりに経験してきたが、いつもとまるで様子が違う。けれど、今回は一人ではない安心感もあった。

Rysyアタックしようか

疲れ切ってるし、びしょ濡れだし、寒いし、この先の天候も不明だし、自分の口から出た言葉に驚いたが、私たちは頂上を目指すことにした。

小屋の外に出ると、冷たい突風が頬をついた。ハイタトラスの山々がガスの合間でおどろおどろしくそびえ立っている。

うっかり山アプリをストップしたままで、この先の軌跡はない。