ティスベリー

イギリスに行くならカントリーサイド

ロンドンの喧騒を避けるように、到着翌日そそくさと列車に乗り込んだ。この言い方だと、まるでロンドンをよく知っているような口ぶりに聞こえるが、私は昨日、人生で初めてイギリスにやってきた。

10ペンスはミッキーからの贈り物、ようやくこのコインが造られた国へやってきた

イギリスに滞在するならカントリーサイドを見たほうがいい。君と話していると、ロンドンよりもカントリーサイドのほうが合っていそうだ。

かねてからずっと思い描いていた土地がイギリス、ロンドンだった。もちろん英語の勉強のこともあったが、10年ほど前から好きになる音楽はなぜかブリティッシュポップになっていた。いや、よくよく考えてみれば、もっと前の学生時代からか。当時好きだった人がイギリスの音楽をよく聞く人で、彼のおすすめを教えてもらってはいつもよく聞いていた。とは言っても、私の学生時代はほぼ100%アメリカクラシックミュージカル、ジュディーやバーブラ、新しいところだとサイモンアンドガーファンクルに占められていて、彼のおすすめ曲は全て異世界ミュージックだった。だから、おもしろい音だなと思ったし、なにより好きな人が聞いている音楽は一度は聴いてみたくなるもの。

そんなわけで、数年前まで”イギリスに行くならロンドン”としか頭になかったのだが、パンデミックの地方ジプシーで、これまで知らなかった日本を知った。と同時に、いろんな人と出会い、いろんな情報を耳にした。

イギリスに行くならカントリーサイド

これは当時の私には寝耳に水だった。かつて都会派だったことを思い返すと、はるか昔のことのように思えてくる。学生時代の友人の多くは、”山登りが好きだ”という今の私に驚く。

しかし、今となってはもうカントリーサイドに行ってみることしか頭にない。そんなわけで、そそくさとロンドンをあとにした。まだよく知らないロンドンを。

ティスベリー サマーリーズ

車窓からの眺めは美しく、あっという間にティスベリーに到着した。

駅に着くと、ホストのエミリーがとびきりの笑顔で出迎えてくれた。ヨガの先生をしているエミリーのまわりはいつもポジティブなエネルギーであふれていて、その瞳には惹き込まれるような温かさを感じた。彼女の所作はとても美しく、価値観にも共感することが多かった私たちは、打ち解けるのに時間はかからなかった。

ファームにブルーベリーを買いに
ここで食べた料理は全て”最高”だった。それはカルプナーシェフの腕もあるのだけれど、素材そのもののクオリティーが最高だったことも大きな理由のひとつ。
毎日家の周りを歩くだけで幸せな気分になれた

毎朝窓の外を眺めると、羊と牛の鳴き声が聞こえた。スイスのグリンデルワルドでは、牛の鳴き声とガランゴロンというカウベルで目が覚め、窓の外には見事な陰影を描く”黒い山”が連なっていた。一方、ここでは鮮やかな緑色をした、なだらかな丘が穏やかに佇んでいた。

しばらくここにいるのだと思うと、それだけで満たされた気持ちになれた。皆のアドバイスは間違いなかったと確信した瞬間だった。家のまわりにある”みどり”はどれも生き生きしていて、ときにはそれを食べたり、摘んだりした。生きているみどりに触れたとき、自分たちもその一部なのだと強く感じた。エミリーは、生きとし生けるもの全てに温かな言葉をかけていた。

イギリスらしいカントリージョーク
エミリーママの手作り料理も絶品。お家の畑で採れたものがふんだんに使われている。
リトリートウィッシュリスト
散歩道にたたずむシンボルツリー

間もなくはじまるリトリートに向けての準備が始まった。このサマーリーズが、私にとって初めてのイギリス人のお宅だったのは幸運だった。これまでの人生で見た数を全て足しても到底敵わないであろう数の(巨大な)蜘蛛にも出会った。久々に触ったピアノの鍵盤は指がもつれた。

ギャラリーの掃除。イギリスの一家に一台(ここには2台いた)のヘンリーと初対面。

エミリーパパは画家で、お家にはため息が出るような美しい絵がたくさん飾られている。客人を迎える準備が着々と整っていく。

ギャラリーのお片付け

埃をはらい、内装を整え、再配置。準備が進むにつれ、眠っていた空間が息を吹き返したように生き生きとした空間に変わっていった。心地のよい空間で、心地のよいメンバーに囲まれ、最高の夏が始まろうとしている。

午後の散歩道もトリックがたくさん