海へ
お祭りのあとで
皆が日常に戻っていった。エミリーが「コミューンのよう」と形容したように、確かに私たちは大きな意味でファミリーだった。皆がいなくなった家はいやに静かで、これまでの時間が夢のようにも思えてきた。後片付けやら掃除やら、やらなければいけないことは山積みだったが、私たちは車に乗り込み、ロングドライブに出かけた。

到着した海岸沿いは、とても穏やかだった。観光客で溢れかえる有名ビーチのように、人目をひく無数ののぼりや売店があるわけではないし、魅力的な波でサーファーたちを惹きつけるタイプのビーチでもない。ただ、お犬を連れたファミリーが、めいいっぱい夏を楽しんでいる。子どもたちの姿も多い。この”全力”で夏を楽しむ様子がイギリスの夏の風景だと知った。限られた季節のなかで蒼い空を見上げる時間。日本じゃない、別の島国の夏。


私たちは、”水遊び”をしている人たちの横を通り過ぎ、化石を眺め、そびえ立つ壁に沿って奥へ奥へと進んでいく。



グラつく足元に注意しながら、私たちの基地に到着した。

石の上で、海の中で
そこだけが平らで、パーティー会場のようだった。

海岸に広がる石の上にマットを敷き、

エミリーパパは、息をするように絵を描いていた。

どうやら中国では学校で水泳の授業がないのだとか。「だから泳げないの」と言うダニーを、水泳の苦手な私がコーチングすることに。いつもガッツのあるダニーは気合い十分、ついに一人でスイスイ泳げるように!短期間ですごい!


今日の夕食も、カルプナーとエミリーママの絶品料理。



すっかり暗くなってきた食後には、もちろんティータイム。


海沿いの一夜と夜明け
皆で川の字になって一晩を過ごした。時折雨がちらつくいかにもうイギリスらしい天気だった。
雨が止むように皆で願いましょう。
エミリーがそう言うと、私たちが寝そべる頭上から星空が見えてきた。太陽熱を閉じ込めた石は温かく、波音がすぐそばから聞こえてくる。心地よくて私たちはすぐに眠りについた。愛犬バーブラは、一晩中じっと座って私たちを見守ってくれていたそうだ。


夜明けの空、雲の合間から明るく三日月が見えた。

とても静かな朝だった。波の音だけが聞こえていた。



エミリーが焼いたパンにジャムを塗り、海を見ながら食べた。エミリーは朝イチで海に泳ぎにいった。海の水はひんやりとして冷たかったが、エミリーは湖のときのようにゆっくりと水に入り、海の奥へと泳いでいった。

ここで過ごす時間も残りわずかになってきたことを思うと、少し切なくなった。
