空港からサンタ•ルチア方面へ

飛行機の時間は夕刻発だったため、空港に荷物を預けて空港からサンタ•ルチアに向けて散策することにした。昨日のマダレナ散策で、ピコ島は何気ない道でさえ見応えがあることに気づいてしまったからだ。どの場所でも絶景であるばかりか、本当にわかりやすく散策マップと標識が掲示してあり、まさにハイキングの聖地とも言うべき場所だ。

空港からのびる道
脇の道に進んでいくと次第に溶岩石が目立つように
広がる溶岩石と海
ここもブドウ園かな

本日もピコ山は顔を見せないが、最終日に見せられても残念に思うだけなのでかえってよい。この大西洋に浮かぶ土地を歩けるだけでも満足だ。

ラジド

最初の集落が見えてきた。空港から最寄りの街、ラジドだ。

海沿いに広がるラジド、ここも溶岩石のブドウ園が広がる

集落に入っていくと、溶岩石の特徴的なお家が続く。

時折住民の声やラジオの音が聞こえる
デザイナーズハウスみたい。そういえば、こんなデザイン衣装のミュージカル映画あったなあ
海側
標識、ピコ山ではよく見る天然プールの標識も

ピコのトレイル

溶岩石デザイナーズを過ぎると、トレイルらしい道がまた出現する。溶岩石の壁はずっと続いている。

地面は少し滑りやすいので気をつけて進む。

相変わらずハイカーの姿はない。

ポルトガルらしいタイル
トレイル目印あり、ガスってなかったら眺望も美しいだろうな

サンタ•ルチア

また次第にポツポツと建物が現れはじめる。使われていない建物も多そうだが、ちらほらと雰囲気のよいレストランや民宿があるような感じだ。

だんだん見慣れてきた石積みのお家
今回の目的地サンタ•ルチアの中心地に到着

街へ来たら教会へ。ヨーロッパ周遊の際、荘厳で大きな教会群に一度見たらもういっか、となったこともあったが、ここアソーレスの教会は身近で温かな雰囲気が漂っており、ふと立ち寄りたくなる場所だった。

サンタルチア教会
教会内部

サンタルチア発空港行きのバスの時刻は予め調べていたが、また乗り場がいまいちわからない。予定時刻まで数時間あったため、偶然見かけた喫茶店に入ってみることにした。

アメリカ帰りの男

”カフェ”というより雰囲気のある”喫茶店バー”といった感じだった。地元の人が数名カウンターで女主人と何やら談笑している。ポルトガルのカフェメニューに慣れてきていた私は、迷うことなくガラオン(グラスに入った多めのミルクコーヒー)を注文した。

空港へのバス乗り場ってどこですかね?

住人と女主人は何やらポルトガル語で話し合い、こちらに一生懸命何か伝えようとしてくれている。誰も英語はわからないといったような雰囲気で皆困った顔になってしまった。もうそれなら仕方ないので、時刻が近づいたら道路でうろうろしようと考えた。どうせ乗る人もほぼいないだろうから、あからさまな旅行客がうろうろしていたら分かるだろう、と思った。ピコ初日に洗礼を受けたピコウェイにすっかり馴染んでしまった。

すると、客の一人が女主人に何か提案したようだった。女主人もガッテンがいったように急いで携帯を取り出し、誰かに電話をかけはじめた。女主人の口から”イングレース”の言葉が聞こえてきた。ポルトガル語で英語の意味だ。女主人は電話を切ると、ここで待っておきなさいね、というような仕草をした。他の客たちもほっとしたように笑顔をこちらに向けた。

しばらくして、店の扉が開き、大柄の体格でどちらかといえば強面の、いかつそうなおっちゃんが威勢よく入ってきた。皆はこの子だよ、とおっちゃんに紹介してくれているようだった。

おっちゃんは、「どうしたんだい?」と英語で尋ねてきた。

「空港まで行きたいんですが、バス停の場所が知りたくて。時刻は調べています。」わざわざこのためだけに来てもらって申し訳ないなと思いながら、おっちゃんに事情を説明した。

「あ〜、そういうことかい。わかったよ、ただ、俺はバス乗らないからな。」と他の客に場所を尋ねた。

「どうやらここ出てすぐのところみたいだ。けど、バスの時間はいつだっけ?」

私は、調べていた数時間後のバスの時間をおっちゃんに伝えた。いかんせん、バスの便はよくない。

「何だって?まだまだじゃないか。飛行機は大丈夫なのか?」

大丈夫だと伝えたが、おっちゃんは不憫そうな顔をし、「それは、いくらなんでも待ち時間が長すぎだ。ここまで来たし、俺が空港まで車で送ってやるよ!」と豪快に笑った。

「コーヒーゆっくり飲みな。車だとそこまで時間はかからない、ゆっくり向かえばいい。それでもバスより断然早い。」と言いおっちゃんは、事情を皆に説明してくれているようだった。皆、そうだ、こいつに乗っけてもらうといい、というようなそぶりを見せた。

「俺はアメリカで働いてたことがあってな、それで英語が話せるんだ。他にわからないことあったら何でも聞いてくれい!」

おっちゃん、客たち、女主人に私というちょっと不思議なコミュニティーが出来上がり、おっちゃんを介してしばらく談笑していた。ポルトガル語はさっぱりわからなかったが、地元のコミュニティーに入れてもらえたような気分になり、居心地がよかった。

時間が経ち、そろそろ行こうか、とおっちゃんの車に乗り込んだ。皆玄関で温かく手を振ってくれた。

車内で、おっちゃんからピコのワインや暮らしについていろいろ教えてもらった。

「アソーレスは美しくて、人も素敵なところですね。アソーレスの中で好きな島はあるんですか?」

ああ、本当にいいとこだ。外に出たらそれがよく分かる。アソーレスの人間は、自分の出身の島が一番だと思ってるんだよ、だから俺はピコが一番だ

気をつけてな!というとおっちゃんの車は勢いよく走り去っていった。ありがとう、おっちゃん。
空港オブジェ、日本にもこういうのあるよね
爆走小型機

また、戻ってこよう、ピコ。ピコ山未踏だし。