4年ぶりの海外

パンデミックと旅

ここ数年で世界は大きく変わりました。人によってその感じ方の程度はそれぞれかと思いますが、海外に行くことが心の糧になっていた私にとっても、自身のライフワークのなかから”海外旅”という項目が意図的に消されてしまったような、ぽっかりと心に穴が空いた状態が続きました。

日本では、ようやく最近になって各種イベントが復活したり、友人たちと気兼ねなく会えるようになったりと徐々に規制が緩和されてきました。パンデミック最盛期、ことあるごとに意図しない二項対立の構造がつくられ、真偽の不確かな情報に振り回された人も多かったと思います。終わりの見えない不安感は、普段はなりを潜めている人の内面を見事に炙り出します。性善説派ですが、いや、世の中は性悪説だったのか?と首を傾げることも多い4年間でした。多数派がいつも正しいとは限らないということは、歴史を見ても明らかです。ここは、順正さんのお話でも聞いた”中道”を軽やかにステップしていきたいです。

海外の友人のなかには、数年前から”ポストパンデミック”で海外旅を再開している話もよく耳にしていました。この行動が正しいのか、正しくないのかといった議論ではなく、真偽飛び交う科学的見解の精査や、属するコミュニティーの状況などを踏まえた自身の決断力、判断力を身につけることが大切だと思います。誰しも、この時間は一瞬、人生は一度きりです。

数年前に海外勢が海外旅を再開しはじめた当初、SNSで海外旅のトピックを見るにつけ羨ましさが込み上げてきました。しかし、徐々にそんな感情が湧かなくなっていることに気づき、海外よりも国内に興味が傾いている自身に驚きました(もちろん意図的に見ないようにしていたこともあります)。このパンデミック期間、今まで行ったことのなかった日本の山間部を転々と移り住んだことで、日本の”新たな魅力”のようなものを実感することができたからです。これまでも、外国の方から日本のおすすめの場所を聞かれる機会が多くありましたが、自信を持ってはっきりと答えることができませんでした。よく知らなかったからです。全国に行ったわけではないので場所は限られていますが、以前よりは自信を持って答えられるようになりました。この4年間に出会った人や場所を振り返ると、まるで第2の故郷ができたような気分になります。ついつい海外に目が行きがちだった私にとって、国内の魅力を感じることができた、なくてはならない貴重な期間でした。

「都会の人がソーシャルディスタンスとかなんとか言ってるけど、ここは生まれたときからソーシャルディスタンスよ!」パンデミック期の名言として記憶しています。

そういう現在も、常時マスクを着けている職業柄、これは”収束”を期待する事項ではなく、まさに”共存”の時代の幕開けなのだと感じています。

海外旅の再開

さて、どこへ行こう。

4年ぶりの海外は、計画段階からあまり実感がわきませんでした。あれこれいろんな国を思案しながら計画を立てますが、スケジュール調整がうまくいかず頓挫する、を繰り返しました。紆余曲折あり、行き先をシンガポールに決めました。

マッキーはポルに続いて2度目の海外旅!

そして、なんと今回はマッキーと一緒!!そう、以前ポル旅にも出てきたマッキーです。彼女との旅はタグ「マッキーといっしょ」にまとめましたので、今回の旅と合わせてのぞいてみてください。以前の記事では、彼女の紹介もしています。

食べ物の嗜好や、趣味も全く異なる彼女ですが、旅を振り返って強く思うのは、友達と旅をするってやっぱり楽しいなということ。彼女のおかげで、1人旅では得られない光景にめぐりあうことができました。

マッキー、旅中はいろいろあって大変だったけど、ありがとう!

シンガポール

シンガポールの観光モデルプランを検索すると、1週間以内の短期で設定されていることがほとんどです。私の前回旅も1週間程度だったように記憶していますが、悪天候による航空機遅延も重なり、かなりタイトなスケジュールでした。観光旅行でいえば、国内外問わず、仕事やスケジュールの都合上、または好みで弾丸旅や短期滞在を選ぶ方も多いかと思います。私は、旅のスタイルとしては一ヶ所長期滞在型が好みなので、今回も期間を少し長めに設定しました。小さい国なので手持ち無沙汰になるかなという懸念も杞憂に終わり(むしろ、もっと長くても楽しめたはず)、そのぶん各エリアを深掘りすることができました。

お決まりの観光名所ベイエリア

前回はベイエリアに滞在し、観光本にもよく載っているような有名な観光名所を点々とめぐりました。綺麗で安心安全快適。モデルプランを実行したようなパッケージ旅でした。下調べもほとんどせず、圧迫スケジュールでスタンプラリーをしているような感覚。現地の人と話す機会もほとんどなく、どこか物足りなさが残る旅でした。

以前のシンガポール旅もこちらから。

それでも、前回少しだけ訪れた”リトルインディア”の鮮烈な印象に、次回来ることがあればこの地域に滞在しようと強く決めていました。普段、旅が好きだというと(インドという国はひとつの登竜門のようなイメージがあるようで)、インドには行ったことがあるかと聞かれることも少なくないのですが、私は行ったことがありません。宗教にまつわる文化や風習、食べ物など、日本や欧米諸国とは全く違っていて興味深いですよね。伝統医学アーユルヴェーダも、気になる大きなトピックのひとつです。そんなまだ見ぬインドをほんの少しだけ垣間見える場所がここなのです。(インド人の方に「とは言っても、ここは本国インドとは随分違うけどね(笑)」と聞きました)

活気あるリトルインディア

多民族国家

時間にゆとりを持ったスケジュールを組んだため、多民族国家の理想と現実、現在の姿になるまでの歴史と変遷など、現地でいろんな考えを巡らせることができました。また、日本人として知っておきたい歴史にも直面しました。一見どこまでも(自然さえも)綺麗に管理され、治安は安定し、秩序立っているように見えるこの国は、成立してまだ50-60年程度です。こうやって特殊な形態で成り立っているのは「なんせ、小さい国だからね」そういう話も現地で幾度となく耳にしました。

各国料理が味わえるホーカーセンター

久々の海外という高揚感だけではなく、この多民族国家の地に降り立ったとき、不思議と解放されるような感覚がありました。周囲を見渡すと、いろんな顔立ちの、いろんな衣装を身につけた人たち。いろんな民族がミックスされた日常風景から、いろんな言語が聞こえてきます。こんなにもいろんな人がいるんだから、ひとつの価値観が正しいと決めつけるなんて不可能だし、そんなのナンセンスだよなあと自然と感じてきます。自身の意見を持つのは大切ですが、考えの異なる他者を否定するのでは、先に述べたような対立の構造を生み出す種になります。

今回の旅では、インドやバングラデシュ、東南アジア諸国から出稼ぎに来ているという方にも多く出会いました。多民族が共存して生活するからこそ、ある程度の秩序統制や、多文化や他者に対する尊重がより一層重要になってくるのは必然的です。とは言え、実際に住むとなると、観光だけでは見えてこない部分もたくさんあるのだと思います。しかし、観光客のひとりとしてこの地に立ったとき、自分自身の、小さなコミュニティーの、そのちっぽけな”当たり前”へのこだわりが少し滑稽に思えてきたのです。そうそう、旅に出るってこういうことだった。

シンガポールの民族のあれこれ概論は、日本とシンガポールのミックスの方が書かれているこちらのブログが大変わかりやすかったです。私は帰国後読みましたが、滞在中の光景を思い浮かべて腑に落ちることがたくさんありました。

日本よりも強くてカラッとした日差しに快適さを感じながら、旅のはじまりです。(マッキーはこの気候が肌に合わないと言っていたので、快適さは、、人によります笑)

タンジョンビーチにて