軍艦島というところ

長崎の軍艦島をご存知だろうか。長崎市内で私が話をした市民の9割は、知ってはいるが行ったことがないと言っていた。

その昔、炭鉱がまだ盛んだった時代、炭鉱夫たちは家族とともにこの”小さい”島で大きな”都市”を築きあげた。石炭による特需で街はたいそう賑わっていたようだが、70年代に閉山になると住むものもいなくなり次第に廃墟と化していった。それが軍艦島である。実際は端島というが、遠くから見ると軍艦に見えることからそう名づけられたのだとか。ユネスコの世界遺産にも登録されており、現在は安全上の理由から入場制限付きのツアーでしか訪れることはできない。

別に廃墟マニアでもないが、中学時代に見たドラマ「深く潜れ〜八犬伝2001」の舞台であるこの場所が脳裏に深く焼き付いていた。俳優たちのミステリアスな演技が舞台の軍艦島と相まって不思議な印象でいつか訪れたいなと思っていた。

ただ春の世の夢のごとし

ツアーでしか上陸できないことがわかり、早速乗船の予約をすることにした。このサイトから簡単に予約でき、当日集合時刻に遅れないように行くだけ。

出航の船着場

船に揺られていると、突如現れる軍艦島。枠組みだけが残る廃墟の陰影がすごい。

ツアーではガイドさんに従い、グループごとに指示された順路で進んでいく。後に舗装された道がいかにも観光地という感じだ。島内は荒廃がかなり進んでおり、建物前には安全柵が設置され、限られた場所しか入場できない。自由時間などあれば、欧州の古城のようにどこかで寝そべろうなんて考えていたのだが、もちろんその願いは叶わなかった。風化の具合を見れば納得だ。

ツアー客が次々と訪れる
ローマみたい
日本最古の鉄筋コンクリートのアパート 30号棟

当時の建築は現在から見ると未熟なものが多く、修復して保存することは不可能らしい。風化が日々刻々と進むなか、今の姿が見れるのも時間の問題らしい。繁栄の面影を残しながらただ荒廃していくのを待つ姿に、どこか無情な人の儚さを感じた。