2024年のドリー・リーバイ

初夢のはなし

ものすごく鮮明に覚えている初夢。こんな年も珍しい。今年は正念寺に滞在しているから、きっと特別な夢に違いない。

そうか、あれはドリー
なのか?

こうやって、大好きな映画『ハロー・ドーリー』を載せたが、かの世話好き仲人役ドリー・リーバイになっていたわけはないし、現在のバーブラにお目見えできたわけでもない。お熱なジーン・ケリーが監督した映画のセットに入り込んだわけでもないし、ルイ・アームストロングとデュエットができたわけでも、アイリーン・シャラフ渾身のゴージャスドレスを身に纏えたわけでもない。

初夢の舞台やキャストは全て、私の現実世界そのままリアル仕様(笑)ストーリーは素っ頓狂なコメディーながら、リアルなキャスト揃いで妙にリアリティーのある映像に仕上がった。

では、いったいなにがドーリー・リーバイなのか。

自身のキャラ設定

あの立ち居振る舞いは、今思うとドリーでしかなかった。普段どちらかと言えばゆったりマイペースな自分が、ドーリーまがいのシャキシャキキャラになっていた(え、もしかして憧れてるの?)のは信じがたい。

そこらの喜劇より面白いのではないかと思うスクリプトのおかげで、思い返しては新年からニンマリしている。そうだ、こういうニンマリできる夢を待っていた。詳細なストーリーは心の中にしまっておくことにする。

1969年のドリー・リーバイ

思いがけず『ハロー・ドーリー』を思い出し、新年一発目の映画はこれを見返すことにした。

オープニングからして大好きなのだが、この映画のサントラを聴くとき、私はいつもニューヨークにトリップする。捨て曲なしのこのサントラは多分この先も聴き続けるだろう。60年代バーブラの歌声はニューヨークやロサンゼルスに軽々と連れていってくれる。旅の最中にウォークマンで聴いたのが懐かしい。夜中に鳴り響くNYPDのサイレンをバックグラウンドに、マンハッタンビル街の一室で、ヘッドフォンから聴こえてくるバーブラの声。この時を待っていた。至高の瞬間だった。

そして、見返して再認識するジーンの影。もちろんジーンの姿はスクリーンに映らないが、”これぞジーン”といった感じの演出は彼の面影、スタイルを至るところに感じることができる。

もともとのブロードウェーバージョンは観たことがなく、69年バーブラドーリーしか知らないので、この役どころが適任なのかどうかは判断しかねるが(未亡人の役どころにしては若すぎる等は言われていたそう)、純粋にこの役のバーブラの演技は最高におもしろい(いつも彼女はおもしろい)。彼女の前作『ファニー・ガール』もそうだが、唯一無二の60年代バーブラの歌声は聞き惚れる。

ジーンが監督だったことで、往年MGM作品のような空気感も残っている。私が往年MGMミュージカルに一目置いているのは、どの場面を切り取っても絵画のような美しさを残していること。これは完全に好みの問題だが、フリードユニットでミネリ監督が最高だ。あの原色パラダイスが現代日本でウケるのかどうかは疑問だが、あれこそ芸術だ!と拍手を送りたくなる作品ばかりなのだ。

話を戻して、ドリー・リーバイ。10、20代で観たときは、おせっかいすぎるキャラと強引なストーリー展開に??だったわけだが、30代で見るドリーは愛らしくどこか憎めないキャラにほっこり。てなわけで、見る年代や回数で変わってきた作品のイメージにまた新たな楽しみを知ってしまった。

ジュディーとバーブラは不動のレジェンドだが、どこか不安定なミアの演技に親近感がわくこともある。けれど、やはり憧れるべきは凛としてかっこいい優等生のジュリーだよな、なんて思い返す。そうだ次は彼女の『モダン・ミリー』でも観ようかな。これもまたオープニングから引き込まれてしまうのだ。