賢治さんのイーハトーブ

岩手の代名詞

岩手に越してきた当初、いたるところで”イーハトーブ”という言葉を見かけて戸惑った。あまりに当たり前に街中で見かけるのだ。新しい土地に行くとGoogleマップ探検に忙しいのだが、このマップ上でもちらほら見かけて訳がわからなかった。確か、あの七ツ森を見つけた際にも、そう書いてあった。

賢治さん文学に触れてこなかったので、もちろんその言葉を聞いたこともなく、意味も知らなかった。兵庫のヨーデルの森、大阪のハーベストの丘、長崎のハウステンボス。。からの

岩手のイーハトーブ?

確か、同僚たちに、「イーハトーブというテーマパークかなにか、岩手でチェーン展開してるんですか?」などとすっとんきょうな質問までしてしまったように思う。

混乱が混乱を呼び、ちゃんと調べてみることに。

イーハトーブとは、宮沢賢治による造語で、賢治の心象世界中にある理想郷を指す言葉である(表記についてはいくつかの変遷を経ている)。岩手県をモチーフとしたとされており、言葉として「『岩手』(歴史的仮名遣で「いはて」)をもじった」という見解が定説となっているが、賢治自身は語源について具体的な説明を残しておらず、異説もある。

ウィキペディア

ほう。

そして、さらに興味深い文を見つけた。賢治さんが生前に出版した唯一の童話集『イーハトヴ童話 注文の多い料理店』の宣伝用広告ちらしには、以下のような説明があるらしい。

イーハトヴとは一つの地名である。強て、その地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕していた、野原や、少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは、著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。

賢治さんの理想郷。彼の物語の舞台は、どうやらここイーハトーブであるらしい。

遠くに神々しい早池峰山が見える

これは、賢治さん関連の施設で読んだ詳しい解説、そして彼の作品を数冊読んで初めて知ったことだが、彼の作品にはたびたび岩手の自然が登場する。彼はさまざまな分野で功績を残しているが、地質学にも長けており、たびたび山に入っては調査を続けていたようだ。その作品をいくつか読むと、彼がどれだけ岩手の自然を愛でていたか、敬意を払っていたかを感じることができる。

彼の作品を読みながら、これまで自身で歩いた岩手の山を思うとき、妙にしっくりくる感覚があった。

多分、彼もこの文を書きながらいつものフィールドワークを思い浮かべていたに違いない

逆に、岩手の自然がなければ、物語は生まれていなかったかもしれない。イーハトーブは、岩手県のゆめうつつの不思議な世界。実際の地名が出てきたかと安心していると、おそろしい化け猫に出くわしたりする。同じ次元に岩手とイーハトーブは共存する。

旅をしたら、その土地で書かれた本を読むことにしている。文章から空気感がわかるから。

尊敬する友人の言葉だ。彼はいつも世界中を飛び回っている。

ああ、これは癖になる読み方だな。

ちなみに、イーハトーブは、2000m級の岩手山をひっとうに豊かな自然に囲まれていて、熊だけではなく恐ろしい化け猫も出る。

どなたもどうかお入りください。決してご遠慮えんりょはありません