椎原行き
登山口を目指して
早朝、滞在先の福岡赤坂からバスで西に向かった。この時期にしては、ずいぶんと暖かい気候だ。(シンガポールで”山散歩”はしたけれど)春先からトレッキングをストップしていた私にとって、今回の山行は山歩き再開の意味も込められている。バス車内には福岡の中心街にいるような観光客の姿はなく、地元の人たちが淡々と乗り降りしている。ローカルバスに乗りながら、次第に景色の変わる車窓を眺めていた。
今回の登山口、椎原バス停までは、ローカルバスを乗り継いでいくことになっている。
なかなか進まないな。
乗り継ぎ地である「城の原」バス停で下車した。手元の時計では、バス発車時刻を1、2分過ぎていた。シンプルに置かれた道端のバス停に人の姿はなく、高まる緊張感を抑えようと努めながら、バス停の時刻表を再び注意深く眺めた。
バス停前は車で渋滞しており、ドライバーたちが不思議そうにこちらを眺めていた。このバスを逃したなら、次は1時間半後だ。
逃したのか?バスが遅れているのか?どっち!
時刻表の下に、丁寧にQRコードが印字されていることに気づいた。バスの現在地がわかるという。なんて便利な。
この何もない場所で1時間半待ちぼうけか、登山口まで歩くか。
心地のよい夏の終わりのような暖かさと、久々に吸う九州の山の空気に、自然と登山口に向けて歩き出していた。
登山口までは2時間の道のり。どの山行にも言えることだが、この登山口までの道というのが一番(気分的に)きついことが多い。
けれど、長い間、この山の色を見ていなかったような気がして、半ばウキウキしながら、スキップしがちに椎原方面に歩いていく。他に登山客の姿はなく、もちろん歩いている人もいない。時折、住人たちの車が1、2台通り過ぎただけだった。
椎原バス停
起点となる椎原バス停に到着した。わかりやすい案内板が設置されている。
登る前に、帰りの便も必ずチェック。
椎原から
雰囲気のある道が続く。山に向かう道の、地元の人たちの生活道路を通るとき、山に入る導入儀式のような気分になる。冬枯れの景色だからだろうか。昨年の岩手の山道を思い出していた。
静かな山道に入っていく。